原因となり得る圧迫要因 圧迫の原因 説明 頸部筋肉の緊張(胸鎖乳突筋、舌骨上筋など) 神経が周囲の筋
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新宿加藤鍼灸院・整骨院グループブログ
2025.08.16
養生法など
テーマ:
睡眠時無呼吸症候群
舌下神経の圧迫と睡眠時無呼吸症候群の関係
■ 舌下神経(第12脳神経)とは?
舌下神経は、舌の運動を支配する神経で、舌の筋肉(特に舌骨筋)を動かす役割を担います。
この神経がうまく働かないと:
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舌が後方に落ち込む
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気道(咽頭部)が狭くなる
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いびき・無呼吸が起こる
つまり、舌下神経の圧迫や機能低下は、舌根沈下による閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の一因になります。
原因となり得る圧迫要因
圧迫の原因 | 説明 |
---|---|
頸部筋肉の緊張(胸鎖乳突筋、舌骨上筋など) | 神経が周囲の筋肉により圧迫される |
顎関節や頸椎の歪み | 神経走行の物理的な障害に |
長時間の猫背・ストレートネック | 頸部の構造異常により神経圧迫 |
頭部外傷・術後 | 神経の損傷や癒着 |
西洋医学的な対処
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**画像検査(MRIなど)**で圧迫原因を確認
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リハビリや理学療法:首や舌の運動療法
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手術的治療(稀):構造的圧迫が明確な場合
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神経刺激療法(舌下神経電気刺激デバイス):海外では承認例あり
鍼灸治療による対応
舌下神経の圧迫に対して、鍼灸は筋緊張の緩和、自律神経調整、経絡調整でアプローチします。
目的
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頸部〜顎周囲の筋緊張を取る
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舌の運動機能を改善
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睡眠の質を高める
よく使われるツボ
ツボ名 | 効果 |
---|---|
風池(ふうち) | 頸部の緊張緩和、脳への血流改善 |
翳風(えいふう) | 顎・耳周辺の神経圧迫緩和 |
廉泉(れんせん) | 舌の動き、喉の緊張改善 |
頷厭(がんえん) | 舌や顎周囲の神経通りを良くする |
頸百労(けいひゃくろう) | 頸部のこわばりや神経圧迫の軽減 |
+ 頸部温灸や軽い徒手矯正(手技療法)も有効です。
漢方薬によるサポート
舌下神経の圧迫が背景にある場合、以下のような体質改善を目指します:
証 | おすすめ漢方 | 特徴 |
---|---|---|
気血両虚(疲れやすく舌が動かしにくい) | 帰脾湯(きひとう) | 気と血を補い、神経機能の安定 |
痰湿(筋肉が重くむくみやすい) | 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) | 痰を除き、咽の違和感・つまり感に対応 |
気滞血瘀(ストレスや筋緊張) | 加味逍遙散(かみしょうようさん) | 自律神経の安定・頸部の緊張緩和 |
✅ 自宅でできるセルフケア
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舌のストレッチ
- 舌を前後左右に10秒ずつ動かす -
頸部の温め(蒸しタオル)
- 首〜顎下を温めると筋緊張が緩む -
口腔体操(パタカラ体操)
- 舌や口の周りの筋肉を鍛える
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
原因 | 舌下神経の圧迫により舌の後方沈下→気道閉塞 |
治療方針 | 神経への圧迫緩和、筋肉の緩和、自律神経調整 |
鍼灸・漢方 | 頸部の緊張・痰湿・気虚を整えることが主軸 |
セルフケア | 舌ストレッチ、温罨法、呼吸法、体操 |
✅ 東洋医学での捉え方
SASは、以下のような体質バランスの乱れとして捉えられます。
東洋医学的体質 | 主な症状・傾向 |
---|---|
気虚(ききょ) | 息切れ・倦怠感・日中の眠気 |
痰湿(たんしつ) | 体が重い・肥満・むくみ・いびき |
肝鬱(かんうつ) | ストレス過多・寝つきが悪い |
陰虚(いんきょ) | のどの乾き・寝汗・浅い眠り |
SASでは、特に痰湿・気虚体質が多く見られます。
鍼灸治療のアプローチ
目的
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気道の緊張緩和
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自律神経の調整
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睡眠の質向上
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痰湿の排出
よく使われるツボ
ツボ名 | 効果・位置 |
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天突(てんとつ) | のどの緊張緩和・気道確保(胸骨上窩) |
廉泉(れんせん) | いびき・のどの乾燥・発声障害(喉の中央) |
合谷(ごうこく) | 自律神経調整・全身調整(手の甲) |
足三里(あしさんり) | 胃腸強化・体力増進・気虚の改善 |
中脘(ちゅうかん) | 消化力改善・痰湿の改善(みぞおち) |
必要に応じて、耳鍼や電気鍼なども併用されることがあります。
漢方薬の選び方(症状別)
※以下は一例で、体質や症状の個別評価が必要です。自己判断は避けましょう。
体質タイプ | おすすめ漢方薬 | 主な作用 |
---|---|---|
痰湿タイプ(肥満・いびき・むくみ) | 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう) | 痰を除き、めまい・ふらつきにも対応 |
気虚タイプ(疲れやすい・息切れ) | 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 気を補い、だるさ・日中の眠気に対応 |
肝鬱タイプ(ストレス・怒りっぽい) | 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | イライラ・不眠・動悸などに対応 |
陰虚タイプ(のどの乾き・寝汗) | 天王補心丹(てんのうほしんたん) | 不眠・口の渇き・神経過敏の改善 |
注意点
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鍼灸や漢方は CPAP療法を否定するものではなく、補完的な療法として活用されます。
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症状の重さ(AHIの値)が高い場合は、まず医師の診断と治療が優先されます。
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漢方薬は**体質と証(しょう)**に合ったものでないと逆効果のこともあります。
こんな方におすすめ
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CPAPが合わない・苦しいと感じる方
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軽症〜中等症の方で他の治療も試したい方
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睡眠の質や日中の不調も同時に改善したい方
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肥満・むくみ・冷えなどの体質を整えたい方
■ 睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠中に何度も呼吸が止まる、または浅くなる状態が繰り返される病気です。無呼吸とは「10秒以上の呼吸停止」のことを指します。
■ 主なタイプ
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閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
喉や気道が塞がって空気が通らなくなる。もっとも一般的(全体の約90%)。 -
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
脳が呼吸の指令を出さなくなる。心不全や脳疾患が関係。 -
混合性(複合性)睡眠時無呼吸
OSAとCSAが合併したもの。
■ 主な症状
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睡眠中の大きないびき
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呼吸の一時停止(家族が気づくことが多い)
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起床時の頭痛
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昼間の強い眠気・集中力低下
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倦怠感、抑うつ気分
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夜間頻尿
■ 原因とリスク要因
原因・リスク 説明 肥満 喉の脂肪沈着で気道が狭くなる 首が太い 気道が圧迫されやすい 加齢 筋肉の緩み 飲酒・睡眠薬の使用 筋肉がゆるみ気道が塞がれやすく 鼻詰まりや扁桃肥大などの解剖的特徴 気道が狭くなる要因
■ 検査方法
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簡易検査:自宅でできる機器を用いたスクリーニング
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精密検査(PSG:ポリソムノグラフィー):病院で1泊して睡眠状態を詳しく調べる
■ 重症度の判定:AHI(無呼吸低呼吸指数)
AHI値(1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数) 重症度 5~15回未満 軽症 15~30回未満 中等症 30回以上 重症
■ 治療法
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CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
鼻マスクを装着し、空気を送り込んで気道を開けておく。重症~中等症に有効。 -
マウスピース
軽症の場合、下顎を前に出して気道を広げる装置を使用。 -
外科手術
扁桃摘出や鼻の手術などが検討されることも。 -
生活習慣の改善
体重減少、禁酒、横向きで寝る、鼻づまりの改善など。
■ 放置するとどうなる?
以下のリスクが数倍に上昇します:
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高血圧
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心筋梗塞、脳卒中
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糖尿病
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不整脈
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交通事故(居眠り運転)
■ 東洋医学的視点(補足)
東洋医学では、**「痰湿(たんしつ)」や「気虚(ききょ)」**といった体質が関与すると考えられます。
鍼灸では、「喉の緊張緩和」「自律神経の安定」「睡眠の質改善」を目的にアプローチすることがあります。 -