鍼灸 高血圧傾向の緩和、交感神経の沈静化などに有効な例あり。 漢方 「血管の柔軟性」や「肝の高ぶり」

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新宿加藤鍼灸院・整骨院グループブログ

2025.07.18

鍼治療

テーマ:

大動脈解離と東洋医学

大動脈解離とは

大動脈の内側の壁(内膜)に亀裂が入り、血液が壁の中に入り込んで壁が裂けて二層になる状態です。胸部または腹部で発生します。


主な原因

原因カテゴリー 内容
✅ 高血圧 最も多い原因。高圧で内膜が傷つく。
結合組織疾患 マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群など。大動脈壁が脆弱。
喫煙 動脈硬化や血管の老化を促進。
動脈硬化 血管壁が硬くなり破れやすくなる。
加齢 動脈の弾力が失われやすくなる(60歳以降に多い)。
外傷・医原性 カテーテル検査など医療行為中に起こることも。
妊娠 特に3期(妊娠後期)にリスクが高まることがある。

⚠️ 症状(突然出ることが多い)

  • 胸・背中の激しい裂けるような痛み

  • 血圧の左右差

  • 意識障害、失神

  • 呼吸困難、冷や汗

  • 四肢のしびれや麻痺(解離が進むと)


治療法(タイプ別)

大動脈解離はスタンフォード分類で治療方針が変わります:

◆ A型(上行大動脈を含む) → 緊急手術

  • 命の危険が高いため即手術(人工血管置換術など)

  • ICU管理が必要

◆ B型(上行大動脈を含まない) → 内科的治療が基本

  • 血圧・心拍数を厳重にコントロール

    • 降圧薬(β遮断薬、カルシウム拮抗薬など)

  • 合併症あれば手術やステントグラフト挿入も検討


フォローアップ・予防

  • 血圧管理(上140以下)

  • 禁煙

  • 定期的な画像検査(CT・MRI)

  • 遺伝性疾患がある場合は専門医と相談

✅ スタンフォード分類とは?

大動脈解離を 裂け目(解離)がどこにあるか で分けた分類です。

分類 解離の範囲 治療の原則
A型 上行大動脈(心臓に近い)を含む 緊急手術が必要
B型 上行大動脈を含まない(下行大動脈から) 内科的治療が中心

CT画像で見る解離の特徴

※実際のCT画像は**造影CT(CTA)**が使われます。以下では構造と見え方を説明します。

以下は、スタンフォード分類A型・B型それぞれの大動脈解離のCT画像の実例とポイント解説です。画像はすべて臨床・教育目的に使用可能なフリーソースから抜粋しています。


スタンフォード A型解離のCT画像(上段=画像1, 3, 4から)

  • 上行大動脈における二重造影像:増強剤が心臓直上の上行大動脈で二層に分かれた構造がはっきり見える。これはtrue lumen(真腔)とfalse lumen(偽腔)の典型例です(画像1, 3, 4) MDPI+5ResearchGate+5スプリンガーリンク+5

  • 葉間切れ目(intimal flap)の確認:真腔と偽腔を隔てる明瞭な薄い線が認められ、心臓起始部にエントリーがあるのが特徴 MDPI+3globalradcme+3globalradcme+3

臨床的意義:A型は心タンポナーデや冠動脈閉塞など合併症のリスクが高く、緊急外科治療の適応となります。


スタンフォード B型解離のCT画像(下段=画像2, 4から)

  • 下行大動脈(胸腹部)の偽腔拡張:上行は正常で、左錨下動脈より遠位で偽腔が顕著(画像2, 4)

  • 真腔が圧迫され小さくなる傾向:偽腔に血液が多く流入し、真腔がつぶれるような描出が見られる Radiopaedia+8globalradcme+8Radiopaedia+8

臨床的意義:B型は内科的治療(降圧薬管理)が主。虚血性合併症やステント治療を必要とする場合もあります。


True lumen/False lumenの見分け方

観察ポイント 真腔(True lumen) 偽腔(False lumen)
造影剤濃度 濃く早く映る 薄く遅れる
形状 円形に近く安定 不整形で拡張しやすい
位置 壁側に偏りがち 中央〜外側でスペースを占有

診断から治療への流れ(画像判読者向け)

  1. CTA(造影CT)撮影:上行→弓部→下行を包括的に撮影

  2. 多断面・3D再構成:解離範囲やエントリー部、葉間切れ目の位置を細かく把握

  3. 分類判断:A型なら緊急外科、B型なら血圧管理+経過観察またはTEVAR(ステント内挿術)


◆ A型大動脈解離(Stanford A)

特徴

  • 心臓から出たすぐの上行大動脈に解離

  • 解離が頭部や冠動脈に影響するリスク大

  • 心タンポナーデの危険

CT画像での所見

  • 上行大動脈が**「二重構造」**に見える(true lumenとfalse lumen)

  • 心臓のすぐ上の血管が裂けている

  • 造影剤が2層に分かれる像

  • False lumenが大きくなることも多い

図解イメージ(想像図)

arduino
心臓

┌──────────────┐
│ 上行大動脈 │ ←ここにfalse lumen(偽腔)
│ ◯◉ ←二重構造 │ ※◯: true、◉: false
└──────────────┘

◆ B型大動脈解離(Stanford B)

特徴

  • 解離は**鎖骨下動脈の分岐より遠位(下行大動脈)**に限定

  • 比較的安定した経過をとる場合も多い

  • 腎動脈・下肢への血流障害を起こす場合あり

CT画像での所見

  • 下行大動脈(胸部または腹部)に二重構造

  • 上行大動脈は正常

  • False lumenの位置によっては臓器虚血の兆候も

図解イメージ

markdown
上行大動脈 → 正常(◯)

弓部 → 正常(◯)

下行大動脈 → 解離あり(◯◉)

True Lumen と False Lumen(CT上の見分け方)

項目 True Lumen(真腔) False Lumen(偽腔)
血流 本来の血液の通り道 解離によってできた隙間
造影剤 早く濃く映る 遅れて薄く映ることが多い
位置 小さめ・偏位しやすい 大きく広がる傾向
形状 円形 不整形、扁平なことも

実際の診断プロセス

  1. 造影CT撮影(CTA)

    • 上行・弓部・下行の範囲を全て撮影

  2. 再構築(3D CT)

    • 大動脈の立体構造を可視化

  3. 治療方針決定

    • A型なら手術、B型は内科管理+経過観察 or ステント治療


まとめ

比較 A型 B型
発生部位 上行大動脈 下行大動脈
CT所見 心臓に近い部分で二層 胸~腹部で二層
治療 緊急手術が基本 内科的治療が基本
リスク 致死率高い 臓器虚血のリスクあり

大動脈解離の再発予防や体質改善を目的とした鍼灸治療の支援について、東洋医学の観点からわかりやすくご紹介します。

※急性期には医療機関での救命処置が優先です。以下は予防・維持管理のサポートとしての内容です。


鍼灸による体質改善の目的

目的 内容
血圧の安定 自律神経の調整で交感神経優位を緩和し、血圧を抑える方向に作用。
血管の柔軟性維持 肝の「気血のめぐり」を改善し、血管のストレスを軽減。
ストレス緩和 精神的緊張(肝気鬱結)を緩めることで全体の緊張をほぐす。
体液循環の改善 「瘀血(おけつ)」や「水滞」を改善して、内圧・浮腫・負担を軽減。

東洋医学での体質理解と対応法

① 肝陽上亢(かんようじょうこう)タイプ

  • 頭がのぼせる、怒りっぽい、肩こり、耳鳴り、血圧上昇

  • 鍼灸対応:太衝・肝兪・風池・百会などを用いて肝気を鎮める

② 瘀血(おけつ)タイプ

  • 冷え、チクチクした痛み、舌に紫斑、慢性高血圧

  • 鍼灸対応:膈兪・三陰交・血海などで血流を改善

③ 陰虚火旺(いんきょかおう)タイプ

  • 口の渇き、寝汗、不眠、焦り、細くて早い脈

  • 鍼灸対応:腎兪・太渓・陰谷などで腎陰を補い火を鎮める


よく使う経穴(ツボ)

ツボ名 主な働き
太衝(たいしょう) 肝の緊張をゆるめ、情緒・血圧安定に寄与
合谷(ごうこく) 自律神経調整、首肩の緊張緩和
三陰交(さんいんこう) 水分代謝、ホルモン、自律神経の調整
百会(ひゃくえ) 頭部の血流安定、のぼせ緩和
腎兪(じんゆ)・志室(ししつ) 血管の元気を支える腎の力を補う

‍♀️ 体質改善の流れ(例)

ステップ 内容
① 初診 体質チェック・脈・舌・腹診・血圧確認など
② 施術 週1〜2回を目安に、状態に合わせて調整
③ 自宅養生 ツボ押し、呼吸法、食事(塩分・油分控えめなど)指導
④ 継続サポート 1〜3ヶ月で血圧安定、睡眠・気分改善が見られることも

漢方や生活との併用もおすすめ

  • 漢方薬:釣藤散、柴胡加竜骨牡蛎湯、牛黄製剤など(体質によって異なる)

  • 食養生:カリウム・マグネシウム・ポリフェノールを含む食材(野菜・海藻・ナッツ)

  • 運動:ゆっくりした深呼吸・ウォーキングなど


注意点

  • 大動脈解離後は医師との連携が重要です。医師の許可を得たうえで鍼灸治療を行うのが基本です。

  • 高血圧・心疾患・抗凝固薬使用中の方には、施術方法を工夫する必要があります(やさしい刺激、短時間)。

方法 内容
鍼灸 高血圧傾向の緩和、交感神経の沈静化などに有効な例あり。
漢方 「血管の柔軟性」や「肝の高ぶり」への対応(例:釣藤散、柴胡加竜骨牡蛎湯など)

生活習慣病の体質改善は新宿加藤鍼灸院整骨院にご相談ください。