鍼灸師が皮膚表面のツボにとらわれてしまう問題点|新宿加藤鍼灸院・整骨院グループブログ

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新宿加藤鍼灸院・整骨院グループブログ

2025.05.07

鍼治療

テーマ:

鍼灸師が皮膚表面のツボにとらわれてしまう問題点

体の表面が治療ポイントでないのに鍼灸師はツボにとらわれて皮膚表面のみ治療
 
  1. ツボ=治療点とは限らない

    東洋医学の経絡理論では、ツボ(経穴)は「気」の流れを調整するポイントとされていますが、実際の「病因」や「病変」はより深部にある場合も多く、皮膚表面だけのアプローチでは深部の筋肉が柔らかくならないので根本治療にならないことがあります。

  2. ツボの固定化により柔軟性が失われる

    多くの施術者が教科書的な「ツボの位置」にこだわりすぎ、本来その人の体に応じた変化や反応点(阿是穴など)を無視することで、個々の患者に最適な施術ができない恐れがあります。

  3. 症状と無関係な部位への過度な意識

    ツボだけを見て「この症状にはこのツボ」と機械的に処置すると、本来必要な筋肉・筋膜、神経経路、筋膜反射、内臓反射などの関連を見逃してしまいがちです。


理想的なアプローチ:

  • 動的な評価と個別対応

    触診や動作観察を通じて、個人に応じた反応点・緊張部位を特定し、ツボに固執しすぎず「今そこにある病」に対応すべきです。

  • 深層組織への適切な刺入

    浅い皮膚刺激だけでは届かない筋肉や腱、神経へのアプローチを必要とするケースもあり、解剖学的知識と技術が求められます。

  • 東洋医学と現代医学の統合的理解

    経絡・ツボの概念を生かしつつ、現代解剖学・生理学・神経学の知見と融合させたアプローチが効果的です。

    刺さない鍼 痛くない鍼の限界


    ■ 刺さない鍼(非侵襲的な鍼)

    これは皮膚に刺入しないタイプの鍼で、次のような種類があります:

    1. てい鍼(ていしん)

    • 先が丸くなっており、皮膚を押したり撫でたりする道具。

    • 古典的な東洋医学にも登場。

    • 小児鍼(こども向けの鍼)にもよく使われる。

    2. ローラー鍼

    • 小さなローラーがついた鍼具で、皮膚の表面をコロコロと刺激する。

    • 血行促進や自律神経の調整を狙う。

    3. 磁気鍼(磁石を使った鍼)

    • 刺さずにツボに磁力で刺激を与える。

    • シール式になっており、自宅で使うタイプもある。


    ■ 痛くない鍼

    • 非常に細い鍼を使う(髪の毛より細いことも)。

    • 刺す深さを調整して、神経や痛点を避ける。


    1. 深層の病変に届かない

      刺さない鍼(てい鍼など)や浅い刺入では、筋肉・筋膜・神経系の深層のトラブルにはアプローチしにくく、急性の強い痛みや慢性の深層の緊張には効果が薄い場合があります。

    2. 身体反応の誘発が不十分

      鍼治療の一部の効果は、「刺鍼刺激による生体反応(筋肉の緊張を柔らかくする、内因性オピオイドの分泌、局所の血流改善、神経調整など)」に依存します。刺激が弱すぎると、神経系や免疫系を十分に活性化できない可能性があります。

    3. ツボ刺激の「量」と「質」が不足

      ツボ刺激には「適切な強さと深さ」が必要です。刺さない鍼や無痛鍼ではこの「刺激量」が不足し、刺した後の変化を感じない、もしくは全く効果が出ないという印象を持たれがちです。


    ただし──全否定はできない理由もある

    • 敏感体質・虚弱体質の人には有効な場合も

      小児や高齢者、過敏体質の人には強刺激が逆効果になることがあるため、刺さない鍼や弱い刺激でも十分反応が出ることがあります。

    • 治療目的によっては有効

      例えばリラックス目的、自律神経の調整、不眠、ストレス性の症状などには軽い皮膚刺激でも効果を示す研究があります(経皮的神経刺激などに近い機序)。

    • 技術と理論次第では有効に使える

      てい鍼やローラー鍼、接触鍼など子供には、正しい部位と方法で使えば一定の効果が得られるケースもあります(特に日本の小児鍼で確立されている)